『法華経を生きる』

石原慎太郎

幻冬舎


 発刊を新聞広告で見て早速購入し、何日もかけて読み終えた頃には、二十万部を越えるベストセラーになっていました。口述筆記なのでしょうか、「ですます」と「だである」の混合や同じ話の繰り返しが全編に目立ちます。

 政治家として、文学者として、ヨットマンとして充実した人生を送る著者ならではの豊富な実体験に基づく視点と、仏典に止まらず哲学・天文学・物理学に及ぶ縦横無尽な引用はさすがですね。国会議員に立候補した際に票をもらうために霊友会に入門するなど生臭い話も隠すことなく披露しながら、法華経観とその背後にある人間観を余すところなく記しています。うん、予想を遙かに超えて面白い。既成仏教への反発じみたものや、霊的能力へのトンデモっ気のある信仰など、ちょっと引いてしまう部分もあるけれど、そうした事柄を気にならなくさせてしまうくらい、魅力に溢れていますね。

 著者は法華経の十如是を重要視しています。十如是とは、物事の在り方を十に分析したもの。その実相を見ることで人生の様々な悩みや苦しみに対して個々人がオリジナルな解決を得られるのだというのが、本書全編のテーマといえるでしょう。私は十界互具(地獄、餓鬼、畜生……菩薩、仏の十の世界のそれぞれの中に、また十界があるという考え。仏の中にも地獄があるetc.)の方に着目しており、そこから派生する人間観・宗教観・信仰観の(そしておそらくは文学観も含めての)違いが様々に意識されました。

 それにしても、松原泰道師の帯の言葉「法華経の思想のひとつ先を石原さんが歩いている」というのはヨイショしすぎでは(^_^;?

(初出:F式ワンダーランド! 1999年1月)

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